家庭用蓄電池は導入すべき?蓄電池単体の運用ではデメリットの方が目立つかも!

今回は、エコキュートから少し離れて、近年急激にその注目度が上がっている家庭用蓄電池について「蓄電池は誰もが導入すべきなのか?」という視点で解説してみたいと思います。

家庭用蓄電池は、その名称から分かるように、電気を蓄えておくことができる住宅設備です。もともとは、日々の稼働に大量の電力を必要とする工場などのバックアップ電源として活用されていた設備なのですが、東日本大震災を契機に、一般住宅でも非常時の電源確保の重要性が注目され、徐々にその需要が高くなっているのです。最近では、さまざまなの営業会社が積極的に蓄電池の販売をしていることもあり、この記事を読んでいる方の中には「蓄電池を勧められたけど、本当に導入してよいものか?」と迷っているという方もいるかもしれませんね。

というのも、もともと自然災害などの停電時に最低限の電力を確保できるといった、非常用設備面で注目され始めた蓄電池なのですが、最近では光熱費削減効果を重視して導入を検討する方が増えているからです。もしあなたが「災害時の備えとして!」蓄電池の導入を検討しているのであれば、迷わず導入するのがオススメです。しかし、日々の光熱費削減効果といった、蓄電池の経済性を考慮して導入を検討している…という方は、よくシミュレーションしたうえで購入しなければ、後悔する未来が待っているかもしれません。
この記事では、蓄電池を導入する場合のデメリット面を中心に解説していきたいと思います。

蓄電池単体の導入はデメリットも多い

それでは、実際に家庭用蓄電池の導入を検討している方に向けて、蓄電池導入におけるデメリット面についていくつかのポイントに分けてご紹介していきましょう。冒頭でもご紹介したように、非常用設備の面で注目された家庭用蓄電池ですが、ここ数年では電気代削減目的など、その経済性をメリットとして紹介されることが増加しています。確かに、家庭用蓄電池を導入し、既存の住宅設備などと上手に連携させることができれば、それなりに大きな経済効果が得られるのも確かなのですが、「蓄電池の導入コストを確実に取り戻せるか?」となると、『NO』となるケースも少なく無いのです。

そもそも家庭用蓄電池に関しては、注目され始めたのもここ10年程度の話ですし、住宅設備としてもまだまだ決して安く導入できるようなものでもないのです。さらに、家庭用蓄電池はあくまでも「電気を蓄えておく設備」であり、これ単体では何の経済性も持っていないのです。蓄電池の電気代節約効果に関しては、太陽光発電と連携させる、深夜帯が安い電気料金プランを活用するなど、その他の設備やサービスと連携させることで初めて得られるものですので、経済性の高さを実感できるご家庭がある一方、全く経済効果が得られなかった…なんてことになるご家庭も少なく無いのです。
以下で、代表的な蓄電池のデメリットをいくつかご紹介しておきます。

単純に導入コストが高い

まず第一のデメリットとしては、単体で経済効果が無い設備なのにもかかわらず、多額の導入コストがかかるというデメリットが存在します。

最近でこそ、小型で低価格なことを売りにした家庭用蓄電池も登場していますが、低価格モデルのほとんどは蓄電容量が小さく、電気代削減効果などの経済効果を得るのが難しいタイプとなるのです。日々の電気代削減などを考えた場合、安い夜間電力を蓄電池に溜めておき、それを昼間に使用するといった使い方をしなければならないため、それなりに大きな蓄電容量が必要不可欠なのです。しかし、十分な蓄電容量を持ったタイプとなると、設置工事費用を含めれば100万円以上の導入コストになるのが通常で、日々の電気代削減のみでかけたコストを取り戻すのはかなり難しいものなのです。

蓄電池は10~15年程度が寿命と言われているのですが、大家族で月々の電気代の高さに悩んでいる…なんて場合であれば、夜間電力の格差を利用した手法でも長期的に見ればお得になるなんてこともあるでしょう。しかし、一般的な家族構成で、それなりの電気使用量となるとなかなかかけたコストを取り戻すのが難しいと考えておきましょう。

蓄電池単体では経済効果などない

家庭用蓄電池を販売しているサイトなどでは、蓄電池があたかも非常に高い経済性を持っているような説明のされ方がなされています。さらに訪問販売企業の中には、「蓄電池を導入しなければ損をする!」などといった営業トークを使うこともあるように、ここ数年、非常用設備としてではなく、経済性の高い設備として考えられるようになっているのです。

しかし上述しているように、家庭用蓄電池は、それ単体では何の経済性も無い設備だということを忘れてはいけません。太陽光発電であれば、電力を発電することができますので、売電や自家消費で非常に高い経済性があると言えるのですが、蓄電池は電気を蓄えることしかできないのです。つまり、蓄電池の導入を検討した際には、現在どういった住宅設備が導入されているのかが非常に重要になるのです。
例えば、太陽光発電設備がすでに導入されているご家庭であれば、発電した電気を蓄電池に溜めておき、それを夜間に使用する…、卒FITで売電価格が下がってしまったため、売電していた電気を自家消費に回すなどと言った使い方をすれば非常に大きな経済効果を得られるでしょう。しかし、こういった設備もなく、蓄電池単体で導入を検討している場合には、そこまで大きな電気代削減効果は得られないと考えた方が良いかもしれません。蓄電池単体で運用する場合、電力会社が用意している深夜帯の電気代が格安になる料金プランを活用することになりますので、まずはそういった料金プランに切り替えたとして10年間でどれほどの電気代削減効果が得られるのかをきちんとシミュレーションしてみましょう。

設置スペースや寿命の問題

蓄電池を導入するためには、機器を設置するためのスペースを確保しなければいけません。最近では、屋内設置型の蓄電池が登場していますが、屋内設置タイプでも非常に重量のある設備となるため、床面がその重さに耐えられるのかきちんと調査してもらう必要があるでしょう。

また、どのような住宅設備でも、その設備の寿命というものが存在しており、蓄電池の場合は10~15年程度使用していれば、買い替えが必要になると考えておかなければいけません。ちなみに、蓄電池の寿命は『サイクル回数』というもので表されており、これは「残量100%の満充電から残量0%の完全放電までを行える回数」です。わかりやすい例を挙げると、サイクル回数が「6,000サイクル」の蓄電池の場合、1日1サイクル使用したとして約16年程度使用できるという計算になります。

蓄電池の導入がオススメできる人

ここまでの情報だけを見ると「蓄電池なんて導入するのはやめた方が良いな…」と考えてしまうかもしれません。しかし、あくまでも全ての人に家庭用蓄電池の導入がオススメ出来るというわけではないというだけで、ご家庭によっては非常に大きなメリットが得られる設備となるのも確かなのです。
ここでは、家庭用蓄電池の導入がオススメ出来るご家庭の条件をいくつかご紹介しておきます。

停電対策がしたい人

まずは、蓄電池による電気代削減効果など関係なく、地震や台風などの自然災害によって引き起こされる停電に備えたい…と考えている方です。こういった「非常用設備として…」という視点で蓄電池の導入を検討しているという方であれば、迷わず購入するのがオススメです。

蓄電池は、電気を蓄えておくことができる設備ですので、自然災害による停電が発生した場合でも最低限の電力確保が可能となります。ただし、蓄電池にも種類が存在しており、蓄電容量や使用できる家電など、購入する機種によって変わってくると言う点には注意しましょう。災害対策として蓄電池を購入する場合には、「万一の停電時に使用したい家電は?」「何日ぐらい持たせたいのか?」などをよく考えて、必要なスペックを持つ蓄電池を探す必要があります。

太陽光発電設備をもっと活用したいと考えている方

家庭用蓄電池は、太陽光発電設備と非常に相性の良い住宅設備です。太陽光発電は、日光を電力に変換する設備で家庭で使用する電気を自家発電することで大きな経済効果が得られるものです。しかし、太陽光発電は日射が無い夜間や悪天候時は発電することができない…という明確な弱点があるのです。逆に家庭用蓄電池は、単体では発電することができないと言う点が弱点です。

家庭用蓄電池と太陽光発電の連携は、上記のようなお互いの弱点を解消することができるのです。例えば、昼間に発電した電気のうち余剰分を蓄電池に溜めておくようにすれば、日射が無く発電できない時間帯でも太陽光発電の電気が使えるようになります。他にも、災害時に使用する場合、蓄電池の電気を使い切ってしまっても、太陽光発電による電気で充電が可能になるため、長期間の停電でも生活のための電気を確保することができるようになるのです。このように、既に太陽光発電を導入しているご家庭や、太陽光発電とセットにして蓄電池の導入を考えているというのであれば、非常にオススメの住宅設備と言えます。

卒FITを迎えたor近々迎える方

2018年後半ごろより、家庭用蓄電池の需要がさらに高くなっています。これは、太陽光発電設備の固定価格買取制度(FIT)が期間満了で終了してしまうご家庭が2019年後半から登場し始めたからです。FITは、太陽光発電設備の普及促進のために作られた制度で、発電した電気を電力会社が高額で買い取ってくれるのを政府が保証したものです。しかし、住宅用太陽光発電に関しては、高額な価格で買い取ってもらえるのが10年間と決まっていたわけです。

FIT期間が終了してしまうご家庭が『卒FIT』などと呼ばれているのですが、卒FITになると太陽光発電の売電価格が「8円程度(大手電力会社の平均価格)」にまで下落してしまうことになり、太陽光発電の大きなメリットであった十分な売電収入が得られなくなってしまうのです。さらにこの価格は、電力会社から電気を購入する買電価格よりもかなり安く設定されているため、太陽光発電で創った電気は自家消費したほうがお得になるわけです。

こういった理由もあり、卒FITを迎えたご家庭では電力の自給自足を目指すために、家庭用蓄電池の導入がオススメできます。

太陽光発電のパワコンが故障した方

太陽光発電設備の一般的な耐用年数は20年程度と言われています。しかし、この耐用年数は、パネル部分の耐用年数であり、パワコンなどの周辺機器はもっと早く故障してしまう可能性が高いのです。特に、太陽光発電の心臓部分であるパワコンは、10年程度が耐用年数と言われており、このタイミングはちょうど卒FITを迎えるタイミングと重なるため、パワコンの交換タイミングで蓄電池の導入が非常にオススメ出来るのです。

というのも、近年販売されている蓄電池の中には『ハイブリットタイプ』と呼ばれる機種が存在しており、このタイプの蓄電池であれば太陽光発電と蓄電池を1台のパワコンで制御できるようになるのです。つまり、太陽光発電のパワコン交換代を節約することができるという考え方もできるため、導入コストの面でもお得になるのです。もちろん、蓄電池導入後は『太陽光発電+蓄電池』という体制が作れるため、電力の自給自足が目指せるという長期的な経済的メリットも得られます。

まとめ

今回は、エコキュートと少し離れて、近年その注目度が急激に高くなっている家庭用蓄電池についてご紹介してきました。家庭用蓄電池に関しては、もともと災害時でも最低限の電力を確保できるといった非常用設備として注目された歴史が存在します。しかし、ここ数年は、家計にかかる電気代削減効果が非常に高い設備として紹介されるようになっており、省エネ設備としての地位を確立するようになっています。

ただし、この記事でご紹介したように、蓄電池単体で考えた場合、設備自身が発電できるような物でもありませんし、誰にとっても経済効果が高いかというとそうでもないのです。蓄電池の販売を専門としているサイトの中には、蓄電池さえ導入すれば誰でも電気代削減が可能と紹介していることが多いです。確かに、安い夜間電力などを利用すれば、蓄電池単体の運用でも多少の電気代削減効果が得られるとは思います。しかし、蓄電池の導入には多額なコストがかかるということを無視して購入したのでは、長期的に見れば大損してしまう…なんて危険があるのです。

もちろん、災害時の対策には必ず役に立つものですので、「節約効果なんて二の次だ!」と考えている方であれば、迷わず蓄電池の導入を行えば良いと思います。しかし、あなたが経済効果を目的として蓄電池の導入を検討しているのであれば、既存の住宅設備は何があるのか、月々の電気代がいくらぐらいかかっていて蓄電池の導入でどれだけ圧縮できるのか…など、本当に蓄電池の導入にかけるコストを取り返すことができるのかシミュレーションしておくのがオススメです。中には、10年使用しても70万円以上の赤字になった…なんて人もいるのです。