太陽光発電が無料で導入できる?『屋根貸し』や『ソーラーPPA』のメリットとデメリット

今回は、近年注目度が高くなっている太陽光発電の新たな導入方法について、それぞれのメリット・デメリットを簡単にご紹介していきたいと思います。

最近では、家庭で使用するエネルギーを電気に統一するオール電化を選択する方が増えています。オール電化は、ガス会社との契約が必要なくなり光熱費削減が期待できることや、火を使わない生活になるため、火災の心配が少なくなるということが大きなメリットです。そして、このオール電化を導入する方にとって非常に相性の良い設備といわれているのが太陽光発電システムです。太陽光発電は、その名称通り、太陽光を電気に変換できるシステムで、昼間は自家発電した電気で生活することができるようになるため、大幅な光熱費削減が期待できるのです。さらに家庭では使用しきれない電気に関しては、電力会社が買い取ってくれるなど、日々の生活にかかるコストを大幅に削減することが可能です。

しかし、実際に太陽光発電の導入を検討した場合、100万円を優に超える設置費用がかかってしまうため、そのメリットは理解できるものの、コストの問題で躊躇してしまっている…という方が多いのです。いくら、光熱費削減が期待出来る、売電収入が得られると言われても、本当にかけたコストが回収できるのかが不安になってしまうという方は多いことでしょう。
実は、そういったコストの問題で太陽光発電の導入に踏み切れない方に注目されているのが『屋根貸し』や『ソーラーPPA』という手法で太陽光発電を設置するパターンです。無料で住宅設備の導入をする方法としてはリース契約などが有名ですが、「屋根貸しって何?」と疑問に思ってしまった方も多いと思います。そこで今回は、「初期費用無料で太陽光発電が設置できる!」といわれる2つの方法について、それぞれのメリット・デメリットをご紹介していきます。

屋根貸しのメリットとデメリット

それでまず、「屋根貸し」と呼ばれる太陽光発電システムの設置方法についてご紹介していきましょう。「屋根貸し」という言葉に関しては、あまり馴染みが無いという方が多いと思うのですが、そこまで複雑なものではありません。名称通りのシステムで、要は、自分が所有している建物の屋根スペースを太陽光発電業者に貸し出すという手法です。

屋根の上は、ほとんどの建物がデッドスペースになっており、何も有効活用していない…という方が多いと思います。「屋根貸し」は、こういったスペースを借りて太陽光発電を設置し、売電収入で利益を求めていくという形態になっているのです。したがって、太陽光発電の設置にかかるコストは業者側がすべて負担することになりますので、自分は何の負担もなく太陽光発電の導入が可能です。
ただし、太陽光発電が発電することにより得られる売電収入に関しては、業者のものになります。屋根を貸した側に関しては、その収入の中から決められた利用料が支払われるという形ですので注意しましょう。要は、太陽光発電を自宅の屋根に設置したとしても、そこで発電される電気の所有権はあなたにはないということです。あくまでも、屋根の使用料が手に入るというやり方ですので、通常の太陽光発電とは使い方が違ってきます。

屋根貸しのメリット

それでは、「屋根貸し」と呼ばれる手段で太陽光発電の設置を行った時に得られるメリットからご紹介しておきましょう。このパターンでは、主にコスト面がメリットになります。

  • 太陽光発電の設置にかかる初期費用が必要ない
  • メンテナンス、修理費用もかからない
  • 屋根使用料として、定期的な収入が得られるようになる

屋根貸しのデメリット

「屋根貸し」は、上記のようなメリットがある一方で、いくつかのデメリット面も指摘されています。実際にこの方法で導入を検討する場合、デメリット面もしっかりと認識しておきましょう。

  • 契約が長期間に及ぶことになる
  • 契約次第では、太陽光発電を導入しても自家消費できない
  • 契約によっては、太陽光発電の電気代削減効果のメリットが得られない
  • 屋根利用料はそこまで高くない
  • 契約が満了しても太陽光発電は自分の所有物にならないのが一般的

「屋根貸し」による太陽光発電の設置は、契約形態により制約される部分がかなり違ってきます。例えば、太陽光発電を設置して、発電した電力を使用したいと思った場合には、太陽光発電業者側に電気使用量を払わなければならないなどと言う契約も普通にあります。
あなたの太陽光発電システムを導入する用途が何なのかによっては、この手法で導入しても全く役に立たない設備にスペースをとられてしまう…ということになる可能性があるのです。「屋根貸し」の場合は、屋根使用料も決して高くありませんし、しっかりと自分にメリットがあるのか契約内容を吟味しましょう。

ソーラーPPAのメリットとデメリット

「屋根貸し」によく似た手法として「ソーラーPPA」と呼ばれる設置パターンが存在します。こちらも日本国内ではあまり知名度が高くないのですが、アメリカなどでは非常にポピュラーな設置方法といわれています。

ソーラーPPAは、日本語で「電力購入契約」という意味になるのですが、これは屋根貸しとよく似た感じで、太陽光発電の設置業者が銀行や投資家から調達した資金で、顧客の敷地や屋根に太陽光発電を設置するという手法になります。屋根貸しとの違いは、契約で定められた期間や条件を満たした場合、設置されている太陽光発電が建物の所有者に無償譲渡される仕組みになっている点です。つまり、無料で設置できるうえに、何らかの条件を満たせば無償譲渡まで受けられるのです。

このように、ソーラーPPAは、建物の所有者が設置コストなどの費用負担が無いのですが、太陽光発電による売電収入は業者のものになるということは覚えておきましょう。また、契約期間中は、家庭で使用した電力分は定められた電気料金を支払わなければならず、太陽光発電を設置したとしても一定期間は自家消費による光熱費削減効果は得られません。

ソーラーPPAのメリット

それでは、ソーラーPPAを使って太陽光発電を設置するメリットについてもご紹介していきましょう。仕組み自体は『屋根貸し』に似ていると紹介しましたが、ソーラーPPAの場合は、将来的な無償譲渡が期待できます。したがって、似たような仕組みでも、得られるメリットは全く異なります。

  • 将来的に条件を満たせば、太陽光発電が無償譲渡されるため、0円で太陽光発電の入手ができる
  • 契約期間中のメンテナンスは業者が行うため、ランニングコストも気にしなくて良い
  • 契約期間中でも、停電時は自家発電に使える

ソーラーPPAのデメリット

ソーラーPPAは、無料で設置して、一定の条件を満たせば無償譲渡されると聞くと、非常にメリットの大きな仕組みだと考える方が多いと思います。しかし、この方法にも、いくつかのデメリットが存在しますので、以下の点に注意しましょう。

  • 契約の条件によっては、満了まで10年以上かかる
  • FIT(固定価格買取制度)期間(10年間)のほとんどが業者のものになる
  • 契約内容によっては、契約期間中の電気料金が割高になる

ソーラーPPAのデメリットは上記のような感じです。太陽光発電は、導入コストの高さがネックになることが多いのですが、そういった悩みに対してはソーラーPPAが非常に適した手段と考えられるでしょう。しかし、しっかりと契約内容を吟味しておかなければ、条件を満たすのに10年以上の期間がかかってしまい、FITによる経済効果の恩恵を得ることができなくなるのです。

実費で太陽光発電を導入する場合、初期コストがかかるというデメリットがある一方、自家消費と電力会社への売電で、かけたコスト以上の収入を得ることも不可能ではありません。こういった点もよく検討し、どのような手段で太陽光発電を導入するか検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、初期コストが無料で導入可能な太陽光発電の設置方法についてご紹介してきました。この記事でもご紹介したように、太陽光発電は非常に節電効果が高いと人気の設備なのですが、設置のためには100万円を超えるような多額の初期コストがかかってしまいます。そのため、電気代削減などの目的で太陽光発電に興味を持っているという方でも、なかなか導入に踏み切ることができない…なんてケースが多いのです。

この記事でご紹介した以外にも、リース契約で太陽光発電を導入するという手法もありますが、こういった手法の場合、総額のコストが割高になってしまう…というデメリットが存在します。そこで近年では、直接自分の所有物になるわけではないのですが、「屋根貸し」や「ソーラーPPA」などと言った手法が注目されるようになっているのです。屋根貸しであれば、コストをかけずともスペースを貸している賃料が必ず収入として入ってきますので、大きなお金ではありませんが、リスクもなく一定の収入が見込めるというメリットがあります。ソーラーPPAは、初期コストに加えて、一定の条件をクリアすれば設備そのものを無償譲渡してもらえますので、「リスクをできるだけ低い状態で太陽光発電の導入をしたい…」と考える方にはオススメです。

なお、近年では電力会社による買電価格が下落していることから「太陽光発電はかけたコストが取り戻せないのでは…?」と考えてしまう方が多いようです。しかし、FIT制度というものは、最終的にかけたコストを回収できるように…ということを考えて買電価格が決定されていますので、使い方を間違わなければ太陽光発電の設置で大幅な損害を被る…なんてことはないのです。ここ最近の買電価格の下落は、導入コストが下落していることや設備の性能が向上し発電量が増加したことから、買電価格が低くても投資を回収できるという考えがあるからです。
こういった事を考えると、無理に無料で太陽光発電の導入を…ということは考えなくても良いのではないかと思いますよ。