太陽光発電は本当にお得なのか?見落とされがちな太陽光発電の維持コストについてご紹介!

今回は、太陽光発電システムの導入を検討している方のため、太陽光発電の命である『発電量』を保つために必要になる定期的なメンテナンスとそのコストについてご紹介していきたいと思います。
太陽光発電は、屋根に太陽光パネルを設置することで、日射を電力に変換することができ、日々の生活に必要になる電気を自家発電することができるようになるほか、使い切れなかった余剰電力を電力会社に売電して収益を得られるという点が大きなメリットになります。したがって、太陽光発電は、初期コストがそれなりにかかってしまうものの、一度設置してしまえば後は光熱費の削減や売電収入で自分たちの出費はなく、とても投資効果が高い設備だと考えられています。

実際に、太陽光発電設備の訪問販売などを受けてみると、数年でかけたコストを取り返すことができ、後は電気代削減と売電収入で「ウハウハですよ!」なんて説明を受けることが多いと思います。それでは、太陽光発電のこういった高い投資効果は本当の事なのでしょうか?現在、太陽光発電設備の導入を検討しているという方であれば、「本当にお得なのか?」「初期費用以外にお金はかからないのか?」という点に不安を感じてしまっているのではないでしょうか?

そこでこの記事では、太陽光発電を導入する前に、皆さんが知っておきたいシステムの維持にかかるコストについてご紹介していきたいと思います。太陽光発電は、投資効果が高い設備なのは間違いありませんが、設備の維持に一切のコストはかからない…というのは間違った認識ですよ!

太陽光発電はメンテナンスが必要なのか?

それではまず、太陽光発電を設置した場合、十分な発電量を長く確保するために「設備のメンテナンスが必要なのか?」という点から簡単にご紹介しておきましょう。太陽光発電設備に関しては、「一度設置するとメンテナンスフリーだ!」などと言われていることを見かけるのですが、実際には「定期的なメンテナンスが必要」と考えるべきものです。

というのも、毎年の売電価格を決定する資源エネルギー庁調達価格等算定委員会の資料を確認すると、太陽光発電設備は「メンテナンス費用がかかる」前提で売電価格が決められているのです。また、同じく資源エネルギー庁が公表している「事業計画策定ガイドライン」の中においても、太陽光発電のメンテナンス、保守点検の必要性に関する記載があります。

そもそも、システムの発電を担う太陽光パネルに関しては、屋根の上など、屋外に設置されるものとなりますので、風に飛ばされてきたゴミやホコリがパネル上に落下することも普通に考えられるはずです。したがって、太陽光発電の十分な発電量を確保していくためには、この設備はメンテナンスフリーなどのではなく、定期的なメンテナンスが必須だと考えておきましょう。
なお、調達価格等算定委員会の資料の中に登場する、太陽光発電設備のメンテナンス費が以下の二つに分類されています。

  • 定期点検費用
  • パワコン交換費用

それぞれのメンテナンス費に関して、以下で詳しくご紹介していきます。

パワコンの交換費用が必要

太陽光発電設備が「メンテナンスフリーだ!」と考えられているのは、発電を担う太陽電池モジュール(いわゆる太陽光パネル)が、半永久的に稼働すると言われているからです。そもそも太陽光発電は、パネルが日射を受けるだけで発電するもので、可動部分や振動する箇所などがないため、他の発電方法と比較しても故障リスクが非常に低く、長寿命だという特徴があるのです。これは、太陽光発電が、灯台や人工衛星など、メンテナンスが困難な場所の電源として設計されたからというのが背景です。

しかし、太陽電池モジュールが、半永久的に稼働すると言われるのとは異なり、太陽光発電設備に関わるその他の周辺機器は、そこまでの耐久力はなく、常識的な使用期限の目安が設けられています。その中でも、太陽光発電の重要部品となる『パワーコンディショナ』に関しては、その寿命がおよそ10~15年と言われているのです。パワコンなどと呼ばれるこのパーツは、太陽電池モジュールが生み出した電気を家庭用の電力に変換する部品となりますので、太陽光発電設備を適切に運用するためには、必要不可欠なパーツと言えるのです。

そしてこのパワコンに関しては、発電効率を維持して使っていくためには、設置後10年を目途に点検を行い、必要に応じて交換しなければならないとされています。上述した、資源エネルギー庁の資料では、パワコンの交換費用は1台20万円程度が目安とされています。太陽光発電設備は、メーカーによる保証期間が25年程度のものもあるなど、設備が寿命を迎えるまでに1度はパワコンの交換が必要になると考えておいた方が良いでしょう。

定期点検にかかる費用

上述したように、太陽光発電設備は、定期的な点検が必要です。そして、資源エネルギー庁の資料などでは、太陽光発電設備は、4年に1回以上の頻度で定期点検を行うようにし、1回当たりの点検費用に関しては、2万円程度が相場とされています。
例えば、太陽光発電を設置して、20年間使用すると考えれば、その間に10万円程度の定期点検費用がかかってくるという計算になります。

なお、この太陽光発電の定期点検に関しては、長期にわたり発電量を維持していくことや安全確保などの観点から、定期的な点検が『推奨』されているものです。つまり、定期点検は太陽光発電設備設置者の義務というわけではありません。太陽光発電設備は、屋根の上のパネル部分が日射を受けて発電するものですが、過酷な気象条件や自然災害などの影響を受け、接続部品などに不具合が生じてしまうことも考えられます。また、ホコリや落ち葉などがパネル上に溜まってしまうと、発電量が落ちてしまう可能性がありますで、発電量を維持するために定期点検が推奨されているのです。また、何らかの理由で、ボルトなどが緩んでしまっていれば、強風で飛ばされてしまい、第三者に怪我をさせてしまう…なんて危険も考えられます。

こういった事から、国も太陽光発電設備には定期点検を推奨しており、それにかかる費用をしっかりと盛り込んだうえで売電価格を決定しています。

太陽光発電のメンテナンスコスト

ここまでの説明で分かるように、太陽光発電設備を設置した場合、定期的な点検とパワーコンディショナの寿命による交換でそれなりの費用がかかってしまうことになります。資源エネルギー庁が設定している標準的な維持コストで考えた場合でも、20年間太陽光発電設備を使用するとして、

定期点検費用(2万円×5回)+パワコン交換費用(20万円)=30万円

30万円もの維持費用がかかってくるわけです。これだけの費用ですので、「太陽光発電設備はメンテナンスフリーだ!」などと決して言えないとわかっていただけるでしょう。

まとめ

今回は、これから太陽光発電設備の設置を検討している方に向け、導入後に必要になる太陽光発電のメンテナンスにかかるコストをご紹介してきました。

太陽光発電設備は、導入時にかかる多額の初期コストさえ我慢すれば、後は光熱費削減と売電収入が得られる非常に優れた設備だと考えている方が多いです。確かに、高い光熱費削減効果やそれなりの売電収入が得られるという点は非常にメリットの大きい設備と言えるのですが、「太陽光発電はメンテナンスフリーだ」と考えているのなら、注意が必要です。
この記事でご紹介したように、太陽光発電設備の発電量を維持していくためには、定期的なメンテナンスが必要とされていますし、重要部品であるパワーコンディショナは10年程度でコストをかけて交換しなければならないのです。特に、太陽光発電の営業を受ける際の収支シミュレーションなどでは、このメンテナンスコストを無視して作成したものを提出してくる業者も存在していますので注意しましょう。

太陽光発電の売電価格は、「メンテナンスにかかるコスト」も考慮したうえで算出されていますし、設置する方に関しても、太陽光発電設備がちゃんと発電できる状態で維持するためにそれなりのお金がかかるということは頭に入れておきましょう!