太陽光発電は、設置環境によって発電効率が変わる?おさえておきたい太陽光発電の設置条件について

今回は、太陽光発電の設置をご検討中の方のため、誰もがおさえておきたい太陽光発電の設置環境による発電効率の違いをご紹介していきたいと思います。

皆さんは、同じ太陽光発電設備を導入したのであれば、どの家庭でも同じ量の電気を発電してくれるものだと考えていませんか?実はこの考えは間違っており、太陽光発電設備には適した設置条件というものがあり、設置条件の違いによって発電効率がかなり変わってしまうものなのです。したがって、営業マンの説明に流されるまま太陽光発電設備を設置したけれど、実際に運用してみたら聞いていたほどお得にならない…なんて話は珍しくないのです。

近年では、エコキュートやIHクッキングヒーターなど、もともとガスを利用していた住宅設備を電気に統一してオール電化住宅を目指すという方が増えています。太陽光発電は、日射を電気に変換することができるため、オール電化とは非常に相性が良く、オール電化への切り替え時点で太陽光発電も同時に導入するというご家庭が多いです。太陽光発電設備に関しては、基本的に屋根にパネルを取り付けて発電することになるのですが、一定以上の耐久力がある建物であれば、どんな屋根にも取り付けることが可能で、設置に関する問題が生じることは少ないです。しかし、実際に設置してみたところ、設置する場所や角度によって発電効率が大きく変わってしまうことになるのです。

誰でも、どうせ太陽光発電を導入するのであれば、できるだけ効率よく発電してほしいと考えるものですので、この記事では、太陽光発電を設置する際に意識しておきたい、最適な設置条件についてご紹介していきます。

太陽光発電に影響をあたえる設置条件とは?

それではまず、太陽光発電の設置を検討した場合に、どのようなことが発電量に影響をあたえてしまうのかについてご紹介していきましょう。近年では、さまざまなメーカーが太陽光発電の開発を行っていますが、どれだけ高性能な太陽光発電設備を購入したとしても、設置する場所が悪ければ、思うような発電量を得ることはできないのです。したがって、太陽光発電の導入時には、自宅が本当に太陽光発電の設置に適しているのかは考えておいた方が良いでしょう。
基本的に、以下のようなポイントが太陽光発電の発電量に影響をあたえますので頭に入れておきましょう。

ポイント① 日射強度

日射強度とは、言葉からイメージできるように「光の強さ」のことを指しています。日射強度を表す場合には「kW/㎡」という単位が使われており、これは太陽のエネルギーの強さを表しています。発電量は、この日射強度に比例するものですので、日射強度が強い地域ほど発電量も多くなります。

ポイント② 日照時間

次は日照時間です。これは季節の変わり目の天気予報などでも使われる言葉ですので、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?簡単に言うと太陽が照った時間数のことです。
太陽光発電の設置条件としては、「晴れの日が多い地域」が良いと考えられていますが、そうではなく「日の長い地域」つまり日照時間が長い地域ほど適しているのです。太陽光発電は、晴れの日しか発電しないものと考えている方が多いのですが、雨や曇りの場合でも発電自体はしているのです。もちろん、快晴の日と比較すれば発電量自体は少なくなりますが、日照時間が長ければその分発電はするのです。つまり、日が早く落ちてしまうような地域は、同じシステムでも1日の発電量は少なくなります。

ポイント③ パネル温度

日照時間が長い、日射強度が高いほど発電量が多くなるため、気温が高い地域ほど発電量が多くなると考える方は多いです。しかし、気温の高さというのは、太陽光発電にとってマイナス要素の一つとなってしまうのです。あまり知られていないのですが、発電を担う太陽光パネルというものは、熱の影響を非常に受けやすく、パネル温度が高すぎてしまうと発電効率が落ちてしまうと言われているのです。
したがって、夏場の気温が異常に高くなるような地域では、発電効率が落ちてしまい発電量が下がってしまう傾向にあります。

最適な場所に太陽光発電を設置するためには?

それでは、実際に太陽光発電の設置を検討した場合、皆さんに抑えておいてほしい「最適な太陽光発電の設置をするための条件」についてご紹介していきましょう。冒頭でご紹介したように、太陽光発電を設置することだけを考えれば、建物と屋根の耐久力さえあれば、どのような屋根でも設置は可能です。
しかし、設置する屋根の条件によって、発電効率が変わってしまいますので、設置場所などもきちんと考えておかなければいけないのです。以下に、発電効率をできるだけ良くするための設置条件をご紹介しておきますので、参考にしてください。

設置する方角

太陽光発電は、上述したように照射される光の量が多ければ多いほど発電量も増えます。皆さんもご存知のように、太陽は昇ってから南を通って西へ沈んでいきますよね。したがって、この太陽の動きを考慮して太陽光発電を設置する方角を決めるのがオススメです。
基本的に、屋根の方角が真南にある住宅が、太陽光発電の設置に理想的と言えます。

屋根の勾配

住宅の屋根というものは、屋根に降り注いだ雨水を適切に排水するため、傾斜が設けられています。この屋根の傾斜に関しては、屋根の形状が違うと変わってきてしまうのです。一般的に、太陽光発電の設置を考えた場合、屋根の勾配が30度前後が最適と言われています。ただし、日本国内でも地域によって南中高度が変わってしまうため、住んでいる地域により最適な屋根の勾配は変わります。一例を挙げると、北海道などでは34度程度なのに対し、鹿児島では27度程度、沖縄では17度と、地域によりかなり違いが存在するのです。
この辺りは、設置業者と相談しましょう。

屋根の形状

屋根がどのような形をしているかも、太陽光発電の設置条件に関係します。もともと切妻屋根屋根や寄棟屋根が主流だった日本ですが、近年では洋風でスタイリッシュな建物が好まれるようになっていることから、片流れ屋根や陸屋根などの人気が高くなっているのです。屋根形状によって、パネルの設置可能数なども変わりますので、現在、日本で良く採用される屋根形状と太陽光発電の関係を簡単にご紹介しておきます。

  • 切妻屋根
    日本の住宅では最もメジャーな屋根形状の一つです。頂上から2面の屋根面が下っていく、三角形のような形をした屋根です。切妻屋根は、屋根面積が広いため、多くの太陽光パネルを設置できるメリットがあります。
  • 寄棟屋根
    これも昔から良く採用されているメジャーな屋根形状です。頂上から四方に向かって屋根面が下っていく形となります。寄棟屋根を採用している場合、どんな場所に建てられていても、必ず南向きにパネルの設置が可能というメリットがあります。
  • 片流れ屋根
    建物の上に、1枚板を置いたような形状です。一方向にだけに向いた屋根で、非常にスタイリッシュな外観を実現できると、近年非常に人気です。また、屋根の勾配が30度程度と、最適なパネルの設置角度に近いというのもメリットです。ただし、屋根の向きが悪い場合には、十分な発電量を得られない場合がありますので注意が必要です。
  • 陸屋根
    屋根に勾配が無い形状が陸屋根と言われます。陸屋根は、サイコロ状でスタイリッシュな外観デザインを実現できることや、屋上としてスペースを活用できることが人気の理由です。太陽光発電の設置を考えた場合には、屋根面に傾斜が無いため、パネル架台などで傾斜をとる必要があります。注意が必要なのは、太陽光発電を設置してしまうと、「屋上として利用できる」という陸屋根のメリットがなくなってしまうことです。

太陽光発電設置時の注意点

太陽光発電は、屋根に太陽光パネルを設置しなければならないため、建物の負担になるということも忘れてはいけません。太陽光パネルに関しても、年々軽量化が進んでいますが、それでも1㎡当たりの重さで12~16kgぐらいの重量があるのです。ちなみに、最も一般的な4kW程度の容量を持つ太陽光発電システムを導入する場合には、屋根の上にのせるパネルの総重量が240~450kg程度になると言われており、皆さんが考えている以上に屋根に負担をかけるのです。
近年では、太陽光発電の設置による雨漏りトラブルの発生などが増えているとも言われていますので、以下のような点は注意しておきましょう。

そもそもパネルの重量に耐えられるのか?

太陽光発電を導入するためには、建物自体がパネルの重量に耐えられる状態でなければいけません。特に、屋根の総重量が重くなればなるほど、建物の重心が高くなってしまうことで、地震の揺れに弱くなってしまうのです。したがって、まずは建物自体や屋根がパネル重量に耐えられるだけの耐久力があるのかを確認しましょう。特に、1981年よりも前に建てられた家は、旧耐震基準で建てられていますので、耐震性能にかなりの悪影響が出てしまう危険があるかもしれません。

地域の自然環境

豪雪地帯や沿岸地域の家であれば、積雪や塩害に注意が必要です。屋根に大量の雪が積もるような地域であれば、パネルの上に雪が積もってしまうなど、冬場は発電量が急激に落ちてしまうことがあります。また、沿岸地域では、海風などによる塩害の影響を受け、システム故障やトラブルを頻発してしまう…なんて危険もあるのです。
こういった地域に住んでいる方は、太陽光発電の契約前に、どういった対策がとられるのか、また通年で発電量に問題が出ないのかをきちんと確認しておく必要があります。

屋根の劣化状況

太陽光発電を導入してしまうと、屋根のメンテナンスが通常よりも困難になります。例えば、スレート屋根などを採用している住宅であれば、約10年おきに屋根塗装が必要になるのですが、パネルの有無で塗装工事にかかる費用が変わってしまうのです。パネル設置後であれば、塗装のためにパネルの撤去と再設置の費用が必要になりますし、当然太陽光発電を導入していない屋根よりは割高になってしまいます。
したがって、太陽光発電の導入を決めた際には、パネルの設置前に一通りの屋根メンテナンスを行っておくのがオススメです。特に、スレート屋根などであれば、ガルバリウム鋼板などの金属屋根でカバー工事するのがオススメです。ガルバリウム鋼板は、非常に耐久力が高く、メーカー保証なども20年以上になっているのが普通ですので、太陽光発電システムの寿命を考えると非常に相性が良いのです。金属屋根の場合も、定期的な点検や棟板金の補修などは必要ですが、塗装工事などが必要ない分、長期的に見るとお得になると思います。

なお、近年では太陽光発電の設置を原因とした雨漏りが増えていると言われていますので、業者選びは慎重に行うようにしてください。

まとめ

今回は、近年導入する方が増えている太陽光発電設備について、皆さんがおさえておきたい、太陽光発電の設置に適した条件や実際に設置する場合の注意点についてご紹介しました。

この記事でもご紹介したように、太陽光発電は、全く同じシステムを導入したとしても、設置条件が異なってしまえば発電できる量もかなり違ってくるのです。そもそも太陽光発電にも適した設置条件というものがあり、それから外れてしまうと営業マンなどが持ってくる資料ほどの発電効率にならない…なんてことが考えられるのです。
実際に、太陽光発電は「設置してよかった」「光熱費が下がった」などと言う声が聞こえる一方で、全く真逆の「太陽光発電なんか設置するんじゃなかった…」などと言う意見も少なく無いのです。皆さんの中には、同じ太陽光発電を導入しているのに、なぜ真逆の意見があるのか不思議に思っていたという方もいるかもしれませんが、実は各家庭によって設置条件が違うため、得られる効果が違ってくるためなのです。

太陽光発電の導入を検討した場合には、まずご自宅の状況が太陽光発電の設置に適しているかどうかをしっかりと検討しておくようにしましょう。